中上健次の原作はかなり前に読んでいるけど、ほとんど忘れていて、若松孝二がこの話を映画化するという聴いた時はあまり期待はしていなかった。それが若松孝二の事故死で遺作となった。
その映画が公開になり、期待しないまま、観に行った。
坊主の妻で産婆のオリュウノオバの手で産まれ、若死にしていった男たち。
「産まれただけでも有り難い」
人の生き死にを見守るオリュウノオバ夫婦が語る路地の物語。
原作は路地に産まれ若死にしていった男たちの六つの話で、その中の三編が映画では語られる。
昭和の泥臭さはこの映画で演じる若者たちには感じられないし、中上健次の濃厚な性描写は若松孝二は描かなかったけど、「産まれただけでも有り難い」物語がここにはある。
延々と奏でられる三味線の唄が被差別の路地の映像と重なり合い、殺されて、殺されても産まれてくる路地の若者たちの物語が浮かび上がる。
「滅びるよりも子を生めよ」
若松孝二の遺言のような映画になっていた。
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