「頭のいい人は騙されまいと人を疑う」
役所広司が劇中に語るこのセリフがこの映画のすべてであり、今の日本のすべてなんだろうと。
無罪と無実は別物となる司法制度は、無実なのに捕まえてしまった人に対し、国の面目にかけて、有罪のレッテルを押しつける。
「頭のいい人は騙されまいと人を疑う」の向こうには組織の落ち度を指摘すると「飛ばされる」恐怖があり、「頭のいい人」は保身を貫こうと「疑わしき物を罰する」
「知っちゃったから作らない訳にいかない」と制作釈明する周防正行は司法を裁くために映画を作る。
『硫黄島からの手紙』では影薄かった加瀬亮のキャラクターを活かした裁判劇は若者たちに「君もこうなるかも知れないよ」と云わんばかりに裁判のからくりを見せる。
セリフの応酬になりがちな裁判物で、周防正行が取った手法は敬愛する小津安二郎の人物の捉え方のような気もする。
俯瞰することなく、裁き、裁かれる双方の表情を追う姿勢は人を観ることなく、組織として裁くを良しとしたこの国のバッシング構造にまでメスを入れている。
来るべき陪審員制度がこの国家権力の落ち度を指摘できるのかどうか、それは「如何に人を見られるのか」という個人の感性の問題ともなってくるのだろう。
中原俊監督作『12人の優しい日本人』と合わせてみると尚、面白いだろうとも思う。
周防正行ディスコグラフィ
1980年代
1984年 変態家族兄貴の嫁さん Abnormal Family
1990年代
1989年 ファンシイダンス Fancy Dance
1992年 シコふんじゃった Sumo Do, Sumo Don't
1996年 Shall we ダンス? Shall We Dance?
2000年代
- 2007年 それでもボクはやってない Even So, I Didn't Do It
- 周防正行 映画データベース
- Ohmynews : 【映画】頭のいい人はだまされまいと人を疑う
『それでもボクはやってない』が指摘した組織社会のおかしさ
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