NPO法人札幌障害者活動支援センターライフ機関誌「アドボケイト」掲載文にすこし加筆修正。
5月21日(水曜)と25日(日曜)に市の社会福祉総合センター4階大研修室で、札幌市が見直しを検討している障がい者交通費助成の意見交換会が、行われた。
どのような意見交換が行われるのか知りたくて、21日に参加してみた。
会場受付で市の方から戴いた資料は見直しの概要を示したものが紙切れ一枚のみで、過去数年の交付人員や事業費の推移や今回の見直しで参考とされたというアンケートの内容などは資料として配られなかった。
過去数年の数値データは障がい福祉課の担当者の方から読み上げられるだけであり、アンケート内容の仔細に関しては参加した当事者グループとのやりとりの中で、話題にあがるにとどまり、これまでの成り行きに関わっていない僕のような参加者にはわかりにくい意見交換会のように思われた。
ちなみに見直しで参考とされたアンケート内容はインターネットのサイトには掲載されてはいるのだけれども、その説明もなされなかった。
会の始めに、市の障がい福祉課から語られた概要は「市の財政難」と「障がい持つ人の利用増」「利用実態が把握できていない」から今後も継続可能な制度に見直すというもので、意見交換というものの、実施は来年度よりと決まっているようで、会場からは「何故急ぐのか?」という意見が相次いだ。
市が提示する見直し内容
- 障がい種別、程度別に多様化した助成を一元化させる。
- 利用の選択に関し、夏場は公共交通機関を利用していても、雪道になる冬場はタクシー代、ガソリン代に切り替えられるという柔軟性を持たる。
- 重度障がいに支給されていた地下鉄、バス、市電を無制限で利用できる福祉乗車証と定期券は利用実績が判らないので廃止とする。
- 公共交通機関の利用は利用実績が把握できるカード式回数券であるウィズユーカードのみとなり、今まで中度の障がい者に支給されていた1000円券(プレミア100円プラス)月10枚が、アンケート調査結果で、利用状況の回答日数の平均値である週3、4回の1000円券(プレミア100円プラス)月2枚に削減され、重度障がいも同程度のサービスとなる。
- 交通事業者の割引がない精神障がいについては同程度の助成を支給する。
その後、参加した当事者たちの生の声はウィズユーカード(カード式回数券)の使い勝手の悪さと1日一回週3、4日しか利用できない助成額では外出の機会を奪ってしまうという意見が相次いだ。
参加した当事者たちの声
- 自宅そばに養護学校があるわけではなく、市内縦断して、養護学校に通わなければならない子供もいる。義務教育を受ける権利も奪うのですか?
- 就職しても交通費助成を受けているために通勤費ももらえない障がい者もおり、就職が困難で作業所に通っている障がい者も通所できなくなる。自立支援法で、サービス利用料として給与の一割を取られる上に、交通費を捻出などできるわけがない。
- 休みの日など街で買い物したり、映画や美術館に行くのも無理になる。そういう事をしたいというのは贅沢なことですか?
- 知的障がいをもつわが子は今は福祉乗車証を使っているけれども、ウィズユーカードになると残額の把握が必要になるけれども、それは無理だし、地下鉄の改札口で残金不足のため、通り抜けできなくなるとパニックになってしまうと思う。
- 全盲者にとってもウィズユーカードの残金確認は不可能で、精算機がどこにあるのかさえ判らない。仮に精算機の位置が判り、使えたとしても(表示される)残金は判らない。
- アンケート内容で週3、4日の利用という回答が多いと言うけれど、家を出て、用を済ませ、帰ってくるという一往復ばかりの利用ではない。病院のはしごをしたり、金融機関、買い物など外出が一苦労な障がい者は一回の外出で、あちらこちら廻り、用を済ますので、結局ウィズユーカードだと1回の使用額がかさみ、週3、4日も出かけられなくなる。
- 利用実態が把握できていないのに、任意抽出のアンケート結果の平均値を何故、支給限度額に設定するのか。利用実態をもっと調査した上で実施してはいけないのか、疑問です。
福祉に関わる者なら誰でも判りそうな切実な当事者たちの声に市障がい福祉課の担当者たちも最後は言葉が詰まりがちになっていた。
「使う立場に立って動いてください。利用者に我慢を強いるのではなく、利用者の声を市に伝え、予算を取ってくるのがあなた方の仕事なのですから。よろしく頼みますよ。」
そんな声も飛び交う意見交換会は札幌市が障がい福祉に対する姿勢が問われるものであったけれども、さて、見直し案の再検討をするという札幌市はどのような判断を下し、再提示してくるのだろうか?