コアな内容のためか、昼の上映がなく観るのを諦めていた塚本晋也監督作品「野火」。
タイムテーブルを確認すると日曜の仕事あと、ちょうど始まる回があると知り、仕事疲れで寝ないか心配だったけど、観に行く。
映画を観ている最中、大岡昇平の原作は読んでいるなと筋を思い出しつつ、原作のエピソードを拾い読みして映像化したようなイメージの積み重ねに、塚本晋也らしいストーリーテラーを感じる。
経済安定期の昭和末期、健康優良児みたいな俳優達が演じる戦争映画に、もう日本は第二次世界大戦の映画を撮ることが出来ないと云われていたけど、21世紀の今、餓えた戦場、兵士達の再現をこの映画はうまく描いている。
灼熱の熱帯雨林、フィリピン、レイテ島で起きた餓えの行進は戦局悪化で何も想定しない行き当たりばったりの軍の命令に右往左往する兵士達の極限状況がよく描かれていて、闇夜に襲う米軍の乱射に血しぶきあげて踊り狂い死ぬ日本兵は塚本晋也らしい演出。
想定外が当たり前の世界の地獄絵図のあとの狂った日常はあっけなかったけど、まずは塚本ワールドで大岡昇平の世界は楽しめた。
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