2008-08-25

復刻 Reprint


復刻されたCDのラベル

代表曲「自由への長い旅」が現在活躍する多くのシンガーたちのバイブルであると云われている岡林信康氏の初期の音源のCD復刻第一弾が手元に届いた。

復刻は絶望的とも云われていたものだけに、嬉しくなってこんな記事を書いたりする。

第一弾は関西ロックのレーベルURC時代のオリジナルアルバムが、オリジナルの形で音源も今までの復刻ではレコード会社が自粛し、カットした曲も完全収録されている。紙ジャケ仕様のもので、当時のアルバムのミニチュアもコレクター心をくすぐりもする。

小冊子のライナーノーツには当時の岡林氏の記事を掲載すると同時に、デビュー40年の歩みを振り返る岡林氏のインタビューも掲載されている。

牧師の父の後を継ぐべく、同志社大に入ったものの、父の教会の信者であった不良少女が何かの事件を引き起こした時、他の信者から激しいバッシングが教会に寄せられ、少女は教会に来なくなった事から、父との亀裂が生まれ、大学をやめて、東京・山谷のドヤ街に日雇い労働者として転がり込んだという岡林氏は、学生だった時は、ドヤ街の住人たちを見下していたけれども、自分も簡単にドヤ街の住人になれるカルチャーショックを受けたという。

反戦シンガー高石友也のライブを聴き、ボブ・ディランに憧れた岡林氏はビクターからアジテーション・ソング「ほんじゃまあおじゃまします」でレコードデビューするはずだったけれども、政治家諸氏を愚弄しているという事から、発売中止の憂き目にあった事から、反体制シンガーとして、脚光をあびるものの、反体制である事に意味を重んじる支持者たちの中で、自分を見失うまいと、フォークからロックへ転向するけれど、更なる重圧に、ステージのスケジュールをドタキャンして、山奥の村にひきこもる。

歌う歌は演歌に変わり、美空ひばりとの出逢いから歌の内容も自分と自然を見つめる歌に変わっていった時、必死に生きる事は無理しなくてもいいに変わっていったという。

日雇い労働者は今は名前を変えて、ワーキングプアという若者たちになり、必死に生きなきゃならない時代となった。還暦を迎えた岡林氏もこの国の人間たちを何とかしたい、という想いがあるのだろう。今回の復刻を岡林氏は自分の活動歴の「ほんの序章にしか過ぎない」と断り、反体制というステータスを否定し、必死に生きなきゃならないから生きた時代を振り返る。

今後、ひと月おきに初期音源が体系的に整理され、発売されるらしく、10月の第二弾はアジテーション渦巻くライブでアルバム化されたもの3点。

松本隆、細野晴臣、鈴木茂、大滝詠一のハッピーエンドとのジョイントでエキサイトする音源やいろんな曲をパロッて、ベトナム戦争で戦争の親玉になったアメリカを野次った「アメリカちゃん」が初のCD化となる。

「いつの間にか私が私でないような」「もう一度私になるために」

岡林氏の新たな「自由への長い旅」に付き合える「今」を喜びたい。

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