2008-12-06

死ねばいいのに You only have to die.

人の生き死にを軽んじる風潮の流れの中、テレビタレントが生み出した流行語で、一時期、よく使われ、よく聴かれた「死ねばいいのに」という言葉。その流行語が流行るずっと昔、本気で「死ねばいいのに」と口にした従弟がいた。

その従弟の事を思い、まだ若かった僕は映画のシナリオ作法の通信講座で与えられた課題のひとつとして、その従弟をモデルとして、シナリオを作ってみたりもした。それから30年経った今、その作品「門出」を携帯小説として、載せてみたくなった。

その従弟の父は事業に失敗し、酒浸りとなり、従弟の母、僕からすれば叔母を殴る蹴るの暴力をふるっていた。

四人兄弟の長男であったまだ中学生の従弟はそんな父を憎み、父が暴れるたびに、父に殴りかかっていった。

父の方も事業の失敗の痛手が大きくなるにつれ、ますます暴力はエスカレートし、従弟の母の首に手をかけるまでになった時、従弟は父を突き倒し、その首に手をかけた。

身内が集まり、止めに入ったこの一件を振り返り、後に従弟は「俺、親父を殺そうとしたんだよな。」と思い返していた。

その従弟もバブル期が終わった頃、経営していた飲み屋も負債がかさみ、飲み過ぎから肝炎となり、40歳の若さで亡くなり、従弟を偲ぶ仲間はmixiでコミュニティなぞ開いて、偲んでいたりする。

家族に暴れることなく、逆にわが子を溺愛しすぎた従弟が死んだ後、従弟の末っ子は可愛がってくれた父がいない寂しさからちょっとだけ非行に走ったりもした。

従弟が「死ねばいいのに」と思った父親は叔母と別れ、今も気まぐれに子供たちの前に顔を出す。

四人兄弟の末の双子姉妹は、その父が顔を出すと、今も条件反射的に震えが来るという。

本気で「死ねばいいのに」と思った人間の気持ちはたやすく「死ねばいいのに」といえるほど気楽ではなく、「死ねばいいのに」と口にした気持ちはいつまでも懺悔のようにつきまとう。

歳月を重ねるほどにそう思えてくる。

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