2010-07-09

Moment or Chronicle

映画「風のかたち」の上映会で売られていた雑誌「Moment or Chronicle」を読み終えた。

「Moment or Chronicle」モメントまたはクロニクル瞬間あるいは持続性。

特集に映画「風のかたち」が取り上げられており、その他柳田邦夫氏が「絵本」の読み聞かせが親子の絆、人と人とのコミニケーションの元なのじゃないかと語りかけるなど、今の時代に失われようとしている瞬間あるいは持続性で一冊の雑誌が成り立っている。

「同じ所にとどまろうと思うなら、全速力で走り続けなさい」

鏡の国のアリス」に由来するといわれる進化論を引用して語られる「試論 幸福の証券化の可能性」は「上がるか、下がるか」のみに興じる個人トレーダーたちのマネーゲームが、幸福というベクトルに向かう幸福の証券化の可能性を試論しているけれども、「上がるか、下がるか」を幸福とはき違えている今日、新たな幸福論が必要なのだろうなと思ったりする。

この本の中で、やはり白眉は映画「風のかたち」のスマートムンストンの医師たちの語りで、小児がんの子供たちの過去、現在、未来を語る姿は何にもまして、今の幸福論だと感じられる。

「泣けなくなったら医者はやめるべきだ」と語る細谷亮太医師は一番最初に看取った患者さんが亡くなった時、助かる見込みもないのに汗だくになって心臓マッサージをし、立ち会っていた医師が止めた後、放心状態で病室に立ち尽くしていたという。それを父兄の方々は救いと感じられたらしいけど、細谷医師は患者さんを救いたい一心で、父兄の姿も見えていなかったと語る。

がんの治療の目標のひとつとして、クオリティ・オブ・ライフ(生存の質、命の輝き)を語る月本一郎医師は、助からない時代から助かる今に至るまでの小児がん治療の医師たちの取り組みを語り、放射線抗ガン剤の治療成果を国境を越えた情報交換としてのグループ・スタディが集学的治療になったと語り、病名告知という10年前のテーマで今日、悩んでおられる地方の医師たちへ映画「風のかたち」を観るようにと、情報格差の今日の状況を気にかけられている。

「頑張れ、頑張れ」だけじゃダメだ、治すにはこれだけ頑張らなきゃならないという具体的な話をすることが子供たちには大切であり、それだから頑張れる事なんだ、と語る石本浩市医師は、小児がんとは生まれてから15歳までに発生するがんの総称と語る。

大人のがんは臓器の管腔に出来るがんが多く、生活習慣からなるのに対し、小児がんは白血病肉腫腫瘍などのがんであり、細胞分裂が活発な子供には抗ガン剤は効きやすいとのことで、成長期でもあるから、脳が出来上がる3歳前後や思春期に過度な治療を行わなければならない時、現れる障がいよりも命を救う事を重視する選択がなされるという。

「Moment or Chronicle」モメントまたはクロニクル。瞬間あるいは持続性。

そのどちらもを考えなければならない事を思い出させてくれる一冊もまた「風のかたち」のムーブメントなのだろう。

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