この頃のスーパー銭湯ブームに便乗し、身体の疲れを癒しにスーパー銭湯巡りなぞしている。
銭湯ほど人が本当に裸になるところはないようで、浴室内に流れる館内放送も日に日に「注意項目」が増えていく。
浴槽にタオルを入れるな、水風呂には汗を流してから入れ、洗い場、サウナ内の場所取りはやめろの他、男湯でも長髪は髪を束ねては入れというものまで流れていた。
テレビ局の取材が入った時など、営業で道草を食っているサラリーマンがおふざけで、「下半身はぼかさなくていいから、顔をぼかしてくれ」という猥雑な話もあれば、何を考えているのか、浴槽内での読書や喫煙、ひげそり、歯磨きをする者もいれば、雨に濡れたズボンをサウナ室に持ち込み、渇かそうとするのもいる。
長湯で浴室で具合が悪くなったのか、湯船に沈み込んだ年配者を周りの者が誰も気がつかずに、露天風呂から僕が戻った時には湯船の中に沈み込み、あぶくが浮かび上がっていたところを助けた事もあれば、首筋から足首まで背中に刺青をいれたお兄ちゃんが店員の目を盗んで、風呂に入り、石鹸をつけ、洗い場で体を洗い始めた時に店員に追い出される場面に出くわした事もある。
何でもありの銭湯の光景の中、先日、これこそ絶句ものに出くわした。
父親とおぼしき人がジャグジー風呂に入る横で、その子供と思われる7、8歳の子が父親の顔めがけて、足で水をかけていて、父親も何も言わず、かかった水をぬぐうのみ。
放任主義の父親は数多く見てきたけれど、こんな父親は始めて見た。
この子の将来も恐ろしいけど、この父親の将来は悲惨なように思う。けれども、そんな世の中なのかなのかなと、その光景を容認してしまう自分が一番恐ろしいような気もする。