2008-11-28

85歳のスナックママ Madam in snack bar of 85 years old

御歳85歳になるスナックバーのママさんと市電の中で出逢った。

このママさん、敗戦直後の食糧難の時に、実家が育ち盛りの甥子、姪子を抱えていたので、実母が口減らしのために札幌に出て来た時、学校時代の同級生のよしみで転がり込んだ飲み屋の女将だった人。

聞こえよく云えばシビアな感覚の持ち主で、自分は豪華なベットで寝ているのに、転がり込んだ幼なじみの実母を土間に敷いたせんべい布団に寝かせ、身の回りのまかないをさせた人と聴く。

実母はそこの飲み屋の手伝いをするようになり、お客として来ていた公務員であったという実父と恋仲になり、僕を身ごもったという。

その恋も叶わぬ恋に終わり、実母は実家への仕送りに追われ、堕胎を繰り返していたために、「これ以上堕ろすと子供を産めなくなる」という医師の忠告に、産む決意を固め、身重な身体で実家に帰省した。

スナックのママさんはそんな僕の出生の秘密を知っている人で、実父の顔を知る唯一の人。

そんな人と自分が生まれて50年目にあたる日にばったり出逢った。

対面で向き合う座席に座り、ひと言二言、言葉を交わし、余計な事も話さずに、軽く会釈を交わし、別れたママさんは、おそらくお店の開店仕度なのだろう、電車を降りると薄野のはずれにあるスーパーに足早に入っていった。

そのママさんを知る従妹は「歩く化け物」と云うけれど、とても85歳には見えない背筋を伸ばした歩きぷりは、昭和という戦中、戦後を水商売で生き抜いた女性の逞しさを感じられた。

不思議な「縁(えにし)」、亡き実母があの人のようにしたたかに生きろと教えてくれたのだろうか?

この縁はありや、なしや。

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