2017-11-13

彼女がその名を知らない鳥たち Birds Without Names

クレーマーに、ストーカーに、女たらし。そんな面倒くさい人間たちが絡むドラマを「凶悪」「日本で一番悪い奴ら」の白石和彌監督が描く本作は一見現代社会を描いているようで、物語は人に執着する人間たちのドラマとなるから、今の時代、こんなに人と人が濃密な関係が果たしてあるだろうかと白けて観ていた。

昭和の頃なら人を信じて騙され、ぼろぼろになるドラマは腐る程あったけど、2000年代となり、ハイテク機器が溢れ、便利さに身を任せる時、人と人の関わりはどんどん希薄化していっているんじゃないか。

そんな時代にこれほどデープな人と人の関わりを描いた本作はなんか昭和のドラマを観ているようで、今は人に対して無関心であるからいくらでも残虐になれると思うし、実際、惨殺事件が騒がれるのもどこかで「またか」と冷めて見聞きする社会があるんじゃないか。

本作品の中で蒼井優と松坂桃李が交わすデープキスも自分の快楽のみを楽しみ、相手の快楽は無関心という描き方なら、現代社会の無関心の冷たさが浮き出たと思うけど、この作品では互いに互いを気遣い、騙し会うから昭和としか感じられない。それほどに現代社会の無関心は空恐ろしい孤立社会になっているんじゃないのかな。

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