仕事帰りに寄る街の銭湯。昨夜はそこに恰幅の良いおじいちゃんと若いスーツ姿の男たちが脱衣所に入ってきて、「生活介護の人たちなのかな?」とふと思う。
そのおじいちゃんが脱ぐ服をひとりの若者が受け取り、いったん広げて、きれいに畳んで、脱衣籠にしまう仕草に、今の介護福祉はここまでやるのかと感心しつつ、その一部始終をちらちら横目で眺め見る。
「生活介護」ではスーパー銭湯だと介護者も入浴料を取られるけれども、普通の銭湯だと服を脱がなければ、介護者は入浴料を取られないという話を聴いた事があり、この人たちも服を着たまま、浴場でおじいちゃんの身体を洗うのかなと思っていると、先に浴場に入ったおじいちゃんに遅れないように、服を脱ぐのを手伝っていた男も服を脱ぎ始める。
脱ぎ始めた男の両腕には見事な刺青が掘られていて、「へぇ、あのおじいちゃん、やっちゃんのおっちゃんなんだ」と改めて、湯船につかるおじいちゃんを見る。
おじいちゃんの身体は肥え太りはするものの刺青のたぐいはなく、刺青なんて入れていないのが親分なのかとひとつ利口になりもする。
付添の若い男はおじいちゃんが湯船に入っている時、手桶に水をくんで、持っていき、湯船から上がる時にはお湯と水のそれぞれ手桶をおじいちゃんに持っていく。
手順に間違いがあったのか、「莫迦か」と怒鳴られる場面もあり、おじいちゃんは如何にも偉そう。同じ浴場にいる見覚えのある若い奴が挨拶もしないで身体を洗っていると、おじいちゃんはその若い奴に声をかける。若い奴は石鹸の泡だらけのまま、直立不動で立ち上がり、深々とおじいちゃんに頭を下げて、挨拶する。
おじいちゃんが洗い場に腰掛けると脱衣から付き添う若い奴がおじいちゃんの身体を石鹸つけて、洗い始め、おじいちゃんが頭を洗っている隙に、湯船につかり、体を温める。
ふと脱衣所の方を見るとこれまた体格のいい若者がスーツ姿のまま、おじいちゃんの護衛なのだろうか、浴場の中をじっと見据えている。
顔なじみなのだろうか、入浴していた普通にみえるおじいちゃんとひと言二言話しかけ、そのおじいちゃんは子分を従えて、帰っていった。
威張り方もさることながら、威張らせ方も見事としかいいようがなく、世にはびこるご機嫌取りたちに見せてやりたいようなそんな「威張る」手本を見せて貰った、そんな一夜の出来事。生活介護もここまですりゃ「かたぎさんたち」に迷惑かけないのにね。
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