2008-09-29

相看涙眼 Tears of parting

遊女たちに愛された柳永は惨めな最期を遂げたと云うが、遊女たちに弔われ、毎年、墓参りも行われたという。

別れの哀しみを詠んだ詞は、別れる前の哀しみと別れる時の哀しみと別れた後の哀しみを唱う。

秋が深まるこの頃、人恋しさの源流を知る。

寒蝉淒切,對長亭晩,驟雨初歇。
都門帳飮無緒,留戀處,蘭舟催發。
執手相看涙眼,竟無語凝噎。
念去去千里煙波,暮靄沈沈楚天闊。

多情自古傷離別,更那堪、冷落清秋節。
今宵酒醒何處?楊柳岸、 曉風殘月。
此去經年,應是良辰好景虚設。
便縱有千種風情,更與何人説。

秋の寒い風が吹いても鳴き続ける蝉の音はもの凄く切ない。
あなたを送る旅宿での宴も、夜の帳がおりて、
降りしきる雨もようやく止んだ。
都の外れで行われる別れの宴は悲しく味気の無い事か
まだまだ別れたくないのに、船頭は出発を催促し始めた。
手を執り合い見つめあう互いの目に涙があふれ、
のどが詰まって何も言えずに咽び泣くだけ。
あなたがこれからはるか彼方へ旅立つ事を想えば、
江南の空は夕闇に深まり、その広さが増していく。

昔から情愛深い者にとっては別れの辛さは格別なのに、
清らかな秋の気配の中、どうして辛さはたえられるだろうか。
今夜の酒の酔いはいったいどこで醒ませばよいだろう。
眠れない夜に柳の岸に立ち、明け方の風と空に残った月をただ見ている。
この離別の後の年月、どんなに美しく楽しい光景に出会えたとしても
見かけのだけにしか過ぎない事だろう
その風情を誰と語り合えるのか。

0 件のコメント: