NPO法人札幌ライフの機関誌「アドボケイト」最新号に掲載のもの。
この頃、郵便不正利用の問題がマスコミで騒がれています。
心身障害者用低料第三種郵便は情報の確保
不正利用されたのは心身障害者用低料第三種郵便という制度であり、この制度は1960年代に、何の生活保障もなかった重い障がいを持つ人たちが国や自治体に働きかけて、出来た制度と聞きます。
全国の障がいを持つ仲間たちがどのような生活をしているのか、情報を共有したいとの願いから、障害者団体の発行するニュースなど、数少ない障がいを持つ者たちの悩みを知る情報源の入手手段を確保することは生きる上、欠かせない物だったと聞きもします。
今のようなテレビ、ラジオ、新聞、ネットなど情報があふれかえる時代では想像しにくいかも知れないけれども、「情報の確保」の大切さは、障害者差別撤廃に関わる一連の人権条例でも大きな比重を占め、ネットなどでは、聴覚、視覚、肢体などの障がいを持つ人たちが利用できるページ作りの指針も示されていますし、「車いすが障がいなのではなく、段差が情報を得る上での障がい」と社会的障がいの問題からバリアフリーの理念も生まれたといわれます。
再発防止の対処策より不正の本質を
ダイレクトメールの郵便不正利用に端を発し、郵便事業会社の不祥事、厚生労働省の担当者が不正に関与していたなど、政官癒着にまで及んだ事件の展開は、あきれ果てるとしかいいようがないですが、不正の本質をあばく考察にならずに、再発防止の対処策に流れてしまうマスコミを始めとする世論の流れが一番の問題であるように思えます。
叩かれないために、再発防止の対処策として郵便事業会社は過剰にも思える窓口対応を行い、煩雑化するだけで、紙資源の無駄遣いにもなる書類主義に、正規の手続きを取ってきた障害者団体が振り回されるというおかしな事の成り行きにもなっており、じゃ、心身障害者用低料第三種郵便をなくしてしまえという暴論も飛び出しているとも聞きます。
日本障害者協議会や全国障害者定期刊行物協会連合会、日本障害フォーラム(JDF)が総務大臣、厚生労働大臣、郵便事業株式会社代表取締役会長に宛て、意見書、要望書を出されたものをネットで読むことも出来ます。
昨今、障害者施策を取り巻く環境への危惧
昨今、障害者施策を取り巻く環境として、例えば北海道における聴覚障害偽装、障害者加算の不正受給などもやはり不正の本質ではなく、再発防止の対処策に流れていっている感じがあり、うちの事業所で働く障害者スタッフの毎年行われている自立支援助成の申請書に「障がい程度の確認」として医師の診断を求める書類が添えられていると、どう見たって、重度障がいである者を再認定に持って行こうとしているのじゃないかと、警戒したくもなってくる。
「障がい」は完治しないと判断されるから「障がい」であり、人間は加齢により、「障がい」も重くなるという常識を、一部の不正を切っ掛けに社会保障の削減策に持って行こうとするようなそんなゲスな社会意識が生まれようとしているような気がしてならない。
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