2010-03-23

牛の鈴音 Old Partner

蠍座で上映している「犬と猫と人間と」が描かれるペットへのエゴというテーマの重さから、時間の都合がついてもどうも足が向かず、みぞれが一日中降りしきる今日は結局、シアターキノで上映する韓国のドキュメント映画「牛の鈴音」を観に行った。

子供らが街に出て、韓国の山村に暮らす爺ちゃんと婆ちゃんが細々暮らすために田畑を耕すために飼っていた老牛の弔いから映画は始まる。

ヨタヨタ歩く老いぼれ牛と幼い頃から足が不自由な爺ちゃんの畑仕事を、愚痴りながらも手伝い続ける婆ちゃん。それだけの話の映画の中に、農薬の話や畑作の機械化の話、市場開放で国内の牛の価格が暴落する話など、ちょっと作為的な仕掛けが施されはするけれど、老牛と年寄り二人は何もしなくても予定通りに老いていく。

山間の自然の中、老いていく者たちが繰り広げる営みだけが映し出されていく。

「土を耕し、子を育てたすべての牛と父親に捧げる」エンド・タイトルに記されたこの言葉がこの映画のすべてであるけど、観ないとそれは分からない。

昔、人は生きるために動物を飼い、動物が亡くなる事でどう生きようか思案に暮れた。そんな生き方しか知らない韓国の老人のドキュメント。

週間天気によると今年3月はこのまま春らしくならずに終わるとか。そんな生き方を忘れた街にみぞれは降りしきる。

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