年前に読み終えた重松清の「みんなのなやみ」の感想を書かなければと思いつつ、三が日が過ぎました。(笑)
他愛ないと大人の僕は思ってしまう子供達の悩みから、いじめられている子、身体が不自由な子、恵まれない子に対するどうにかしてやりたいという悩み、自分を押さえて、廻りのよい子になろうとする子の深刻な悩みまで重松清が回答するQ&Aもので、終盤は親である大人の悩みまで書き添えられて、「みんなのなやみ」とはなんなのだろうという編者・重松清の姿勢が見えてくる。
最初、読み始めの頃は何でこんな子どもの悩み話の回答を読まなきゃならないんだろうと思っていたけど、読み進めるに従って、今の子供達の悩みが何となく見えてきて、これって社会の悩みジャンと思えてくる構成はうまい。
重松清の回答はところどころそうかなと思うところもあるけれども、「子どもだから」という姿勢はそこにはなく、ひとりの人として、どう「悩み」に向き合うべきかが何度も語られる。
そんなことを思い返している時、昨夜1月3日夜、NHK BS1で放送された「プロジェクト WISDOM どうなる日本」はそれこそ今の日本の「みんなのなやみ」なのじゃなかという番組だった。
外国の諸氏から見た今の日本の駄目なところとよいところ。それを語り合うことで、日本はどうなるかを考えてみようとする試みは、組織化された古い体質がグローバル化でうまく作用出来ない、少子高齢化の打開策を示せない、巨額赤字の国家運営といったマイナス面と、組織化された社会が安定社会を支えてきた、細かな技術や勤勉さ、マンガ文化など特異な文化を持つ国というプラス面をどう切磋琢磨させていけばいいのか、何が欠けていて、何を見落としているのか、になっていく。
その語り口が重松清の「みんなのなやみ」に重なるようで、今の世の中、見殺しにされているのは子供達なのだろうとふと思う。
日本に投資する外国人投資家は、「今の政治、経済、総首すげ替えしなければ、喰うに困る子供達が大人になり、革命を起こす」と警告し、「数年先、私も投資しているかは判らない」と脅しもする。
既得権益ばかり追い求める一部の大人たちは古い体質を温存して、グローバル化で急激に減少した収益を補うべく、リストラや派遣社員など人件費削減で生き残りを考えているけど、後継者育成がなされない時点で、日本の未来を考えていない。
それはちょうど「いじめ」を親に告げると自分がいじめられる子供達の世界と同じようなもので、「いじめ」がスパイラルしているのだろう。
「失われた10年」といわれた日本経済は「失われた20年」になろうとしており、「失われた平成」でもあるだろう。豊かさしか知らない子供達も成人となり、自分が「忘れられた子ども」であると気がつく時、日本の良さは蘇るのだろうか?
ひとりの人として、どう「悩み」に向き合うべき、そう思う時、またしても長谷川きよしの「なやみ」に目をそらすことなくひたむきに漕ぐように歌われる「黒の舟唄」を思い出す。
それでもやっぱり逢いたくて、
えんやこら、今夜も舟を出す
ローエンドロー ローエンドロー
振り返るな!ロー
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