昔、主流を極めたフランス映画。
今、レンタルDVD化はほとんどされておらず、地道に発売続ける紀伊国屋もレンタル不可のセル・オンリー。パブリック・ドメイン、天井桟敷の情報格差是正は未だ日本では浸透していないようだ。
日本の知識人が愛したフランス映画を観るのは一苦労の情報断絶の時代。
束の間、DVDで発売されていたものも今はプレミア付きの高値でオークションで取引されもしている。
幸い、レーザーディスクや高値つく前に買いあさったDVDなどで好きな映画は手元にあり、今日は仕事しながら、全編歌曲形式の『シェルブールの雨傘』を垂れ流し、映していた。
ちょうど僕が産まれた時代、フランスはアルジェリアの独立戦争で、独立させまいと兵隊を送り込んでいた。
北フランスの田舎町シェルブールに住む恋人。
仲むつまじい恋人の元にも召集令状が届き、二人は引き裂かれる。
数年後、それぞれ家庭を持った二人は偶然の再会に一喜一憂する。
社会の荒波に呑み込まれ、運命に翻弄される庶民の悲哀を描いたこの映画は静かなる社会への抗議。
ヌーベルバーグともてはやされた人々と同じ頃、この『シェルブールの雨傘』の他、記憶を失い戦争から帰ってきた夫に必死で記憶を甦らせようとする妻の話、『かくも長き不在』やインドシナ戦争の後遺症を持つ男と寄宿学校に入れられた12歳の少女の逢い引き、『シベールの日曜日』などの名作も作られた。
『かくも長き不在』の手術で消され、けして戻らない夫の記憶のように、『シベールの日曜日』の変質者として射殺される男のように、「戦争」の記憶は忘れ去られていくのだろうか。
垂れ流しの『シェルブールの雨傘』のラストはやはり泣けてくる。
忘れ去られる庶民の記憶を多くの方と共有できる日を願って。
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