その名前を口にするだけで幸せになれそうな、あこがれの人。カルトーラ。
その人の生前の歌う姿を収めたDVDが発注から数ヶ月して、手元に届き、観た。
モノクロの陰影の濃い画面に映し出されるカルトーラの弾き語り。
貧しいながらもリオ・デ・ジャネイロの裏山マンゲイラで好きな歌を歌い、仲間達とエスコーラ・デ・サンバ(サンバ学校であり、サンバ共同体)を作り、近隣のエスコーラ・デ・サンバと競い合うカーニバルを生み出した立役者。
ゲットー化した後、一線を退いたけれども、返り咲き、マンゲイラのために活動を続け、マンゲイラの地で眠りについた。
収められた映像は初のメイン・レコーディングを終えたプロモーション用に撮られたものという。
時は軍事政権下、カルトーラはいつも歌で人生を語る。
「人生は風車」
よくお聞き。
気をつけるんだよ。人生は風車。
君の夢を細かく、細かくすり潰す。
幻想を粉々にしてしまう。
よくお聞き。
死んだ者が遺すのは、シニズムだけ。君がいるのは、深い淵のへり。
君自身の足が掘る、淵のへり。
「沈黙のバラ」
僕はバラに語りかける。
だがもちろん、バラは黙ったまま。
バラはただ、君から盗んだ香りをまき散らすだけ。僕の瞳に映る悲しみを、
君に見せたかった。
僕の夢を、君もまた見てくれるだろうか。
「愛するマンゲイラ」
緑は青空と同じで希望を
白は水のしずくに似て出逢いの喜び
頬が染まった赤色は私の好きな色そして黒は悲しみの色
カーニヴァルの終わりのあの悲しみ
そう、黒はこの世の人生全ての悲しみの色
「日は昇る」
微笑んで生きていたい。
涙にくれて、青春を失ってしまったから。嵐が終われば、日はまた昇る。
この想い出が消えたら、誰かまた、愛する人を見つけよう。
陳腐だから、愛。
それすら出来ない者がホラを吹く。
映画「シティ・オブ・ゴッド」ではカルトーラの曲をバックにストリートチルドレンが殺し合いを繰り広げるのですが。
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