2007-05-01

善き人のためのソナタ Das Leben der Anderen

上映時間との折り合いがようやく合い、映画『善き人のためのソナタ』を観てきました。

1984年、壁崩壊前の東ベルリン。
国に忠誠を誓う男が国家保安省(シュタージ)の局員として、劇作家の部屋の盗聴を四六時中、監視続ける。

劇作家は言論弾圧が進む監視国家の実態を明らかにすべく、西側のマスコミに記事投稿を企てる。

人が集団化し、組織化されていくと、妨げとなる個人の自由は邪魔になる。

「愛国」とは国への忠誠なのか、それとも国への警告なのか、国家保安省局員の苦悩は国を愛するが故に、ますます深まっていく。

組織を重視する国家論を突き詰めていけば、その国の君主すら国家のための広告塔でしかなくなる。

それは1995年に日経連が出した「新時代の『日本的経営』」の基幹職だけからなる経営基盤優先は専門職、一般職、営業職の非正社員推進するという理論にも繋がるはずで、「労務コスト削減」は「正社員不要論」にもなるのじゃないかという新聞コラムの指摘を思い出す。

社会主義は国家資本主義と云われただけに、権力の集約化が壁崩壊を早めたとも云われている。

企業資本主義の西側諸国は「グローバルマネー」獲得という限りないものを敵とした事で、監視社会となり、国民の部品化、環境破壊と突き進んでいる。

告発すべきところのない不幸。

企業資本主義は国家資本主義より悲惨な末路を迎えるのだろうか?

告発すべきところの自覚の問題だろう。

ボルヘス『砂の本』「疲れた男のユートピア」より

「政府はどうなりました?」
「言伝えによれば、次第に廃れました。政府は、選挙を公示し、宣戦し、税金を徴収し、財産を没収し、逮捕を命令し、検閲を課そうとねらいましたが、地球上の誰ひとり、従おうとしなかった。新聞は記事や写真を発表するのをやめてしまいましたし、政治家たちは、清廉な職業を見つけなければならなくなりました。ある者は立派な喜劇役者になったし、ある者は、見事なイカサマ医者になりました。もっとも、現実は、こんな要約よりは、確かにずっと複雑だったでしょうがね。」

YouTube - Tráiler español de "La vida de los otros"

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