元共産党員だった作家、井上光晴の原作をこの春亡くなられた映画監督、熊井啓が低予算の自費映画制作として知られたATGで作られた名作。
被差別部落と被爆者部落の確執がある強姦事件から燃えさかり、怒鳴り込みに行った被差別部落の女に被爆者部落の石が飛ぶ。
弱者と弱者が罵り合い、事件を告発した者もまた怒鳴り込みに行った女に石を投げる。
鶏を食い殺した大量のネズミがガソリンの炎で一瞬のうちに焼かれる映画のオープニングの残虐さは人間が行う残虐さである事を浮かび上がらせ、投げられた石で血を流し、死ぬ女の姿は、昨今のいじめ虐待の一連の報道を想起させられる。
「肉体に意味はなく、魂に意味がある。しかし、その魂も死と共に失せるものであり、超自然は生き霊のなせる技」
ラテンアメリカ文学諸氏の短篇集『美しい水死人』の後書きをふと思い出す。
弱者はいつになれば弱者を理解するのだろうか?
封印された日本の現代史に横たわる「トラウマ」の石が今も飛び交っている。
石原裕次郎が遺言でビデオ化を禁じたと云われる熊井啓監督、石原プロの作品『黒部の太陽』も観たいけど。
- OhmyNews : 弱者はいつになれば、弱者を理解するのだろうか?
- 映画データベース 熊井啓
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