若い頃に定年となり、年老いたら、歓楽街や都会の雑踏が身近にある落ち着かない生活から逃れたいという願望の元、買ったニュータウンの我が一軒家、いざ定年になると何もない我が家の街の物足りなさに、若気の至りを悔やんだりする定年男5人。重松清の「定年ゴジラ」の書き出しは、そんな男たちを哀感豊かに書きつづる。
勝ち負けをメンコで決めるメンコ世代と称される小父さんたちと10数年歳が違う僕もメンコの記憶は確かにある。その小父さんたちがみんな負けの現実と向き合う時、やけ酒飲みたくても、飲み屋もない街で、昼日中からワンカップの酒盛りを始め、この街の設計を担当した親父さんは、発売当時、競争倍率が高かったこの街のプレゼンテーションに使われたミニチュアを前に、職場の宴会芸のりで、街を壊しまわるゴジラのまねをやる。やがて、嫌な思い出しかないミニチュアの前に向かおうとした時、小父さんたちは生涯最大の買い間違えのシンボルでもあるこの街のミニチュアを守ろうと、ゴジラ小父さんを必死で止めに入る。
負け人生にも守りたい物はあるとでも云わんばかりの重松清の語りはそうだよねぇと云いたくなる。
悔いのない負け人生の過ごし方を学ぶこの頃。
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