2009-07-03

精神 Mental

自分を責め尽くし、疲れ切った女、幻想に悩まされる男、我が子を殺した女、世間を知ろうとしてノイローゼになった男。様々な「精神」を持った人たちが集う処である「こらーる岡山」

その場所を観察するようにフィルムはまわり、小泉政権下で障害者自立支援法がどんな形で自分たちを襲うのか脅える人たちをカメラは捉える。

「心の傷を負った」人たちの悩みを親身に聴く山本昌知医師の人柄にみんなが手を合わせたくなる気持ちは語られる様々なエピソードとその診察風景でよく判る。

「心の傷を負った」ひとり菅野さんの詩は彼らの心を映す一例でもある。

自分の十字架が
重すぎて
たくさんの人に
ささえてもらいながら
生きています
ありがとう

現在、ニューヨーク在住の想田監督はこの映画を通して、障害がなんなのか判らなくしている狭間の「カーテン」を取り去りたかったと語っており、狭間の「カーテン」に固執する日本社会のおかしさ、異常さを描いたのだなぁと思った。

それはラスト近く役所の人間と電話で掛け合うスタッフが狭間の「カーテン」に固執しながらも、狭間の「カーテン」を忘れている役所の人間に浴びせるきつい脅し文句に如実に現れている。

薬をあてがわれ、薬で生き、薬代のためにかけずり回る人たちは支援のさじ加減で生死をさまよう。

「身体」「知的」「精神」の三障害の中で、危険視されながらも、「障害」の支援対象としては一番最後に認められた「精神」は統合失調、鬱、自閉、発達障害、PTSDなど多様極まる障害であり、障害というより人間とは何なのかから見なければならない障害。

置き去りにされた人たちを、小泉どぶ板選挙を描いた『選挙』に続き、想田監督は目をそらすことなく描いている。

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