「毎日かあさん」の元夫側バージョンの映画「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」を観てきた。
「毎日かあさん」が家族の話ならば、「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」はアルコール依存症のお話。
原作者、鴨志田穣さんの闘病シーンがアルコール依存症の現実を教えてくれる。
ウイルス性とはいえ、肝臓を患った人間としては、病院食への固執の場面などよく判るところで、アルコール依存症は肝疾患の他に、アルコールへの固執との闘いがあるからだろう、精神科病棟の中にアルコール依存症の閉鎖病棟があると描かれていて、驚きもした。
劇中、主治医が、アルコール依存症に対する偏見を元妻の西原理恵子さんに語る場面で、時には医師からも見下される病気の辛さはそうだよなと思いもした。
僕の従兄弟でふたり、アルコール依存症で亡くなっていて、ひとりは閉鎖病棟から退院したその日に、ワンカップを一ケース買い、誰にも咎められる事のない自分の部屋で一晩で飲み干し、翌朝、死んでいるのを伯母によって発見されたし、もうひとりは飲み屋経営で、元々肝機能が弱っていたのが、平成不況で、深酒するようになり、病院の入退院を繰り返し、死んでいった。
「酔いがさめたら、うちに帰ろう。」の鴨志田さんの子煩悩ぶりを見ると、病院の入退院を繰り返した従弟が、こっそり病院を抜け出し、まだ小さかった次男坊と共に街を歩いているところとばったり出くわした時の事を思い出す。
意志が弱いとか、強いとか、そんな次元を遥かに超えたものがアルコール依存症であり、もうひとつの肝疾患、脂肪肝と同様の病気だと、僕は思う。
自己管理出来れば、他人なんて誰もいらない。それが出来ないから、病院がある。
そんな当たり前の事が医療崩壊の今日、自己管理が大手を振るって、忘れられているとしか思えない。
「もう一度一緒に暮らそう。嫌かも知れないけど」
元妻から告げられた告白にはにかむ鴨志田さんは実際どんな顔をしたのだろう。
鴨志田さん役をした本作の浅野忠信と「毎日かあさん」の永瀬正敏、西原さん役の永作博美と「毎日かあさん」の小泉今日子、どちらが素敵だったかという愚問はやめておきます。
この映画へ観て、脂肪肝、糖尿病の闘病映画も出来ないかなと思うけど、心に突き刺さる人が多すぎて誰も見ないかな。(笑)
日本の食の三割は食べる前に切り捨てられて、更に残飯として出され、食べた物、飲んだ物で肝疾患を患う人は多いという。
東陽一監督も戦場カメラマンとしての鴨志田さんへのこだわりを見せはしたけど、これは飽食時代の闘病映画と見るのが正しいように僕は思う。