2009-12-11

戦場でワルツを Vals im Bashir

オバマ米大統領が12月10日、ノルウェーのオスロで行ったノーベル平和賞の受賞演説で「時に武力は必要だ」と発言したという。

「武力」を命じる者は「多少の犠牲」は致し方ないという。

イスラエル人のアリ・フォルマン監督のアニメ作品「戦場でワルツを」を観た。

26匹の犬に追いかけられる悪夢から始まるこの映画は生きるために失った記憶を生き続けるために取り戻す物語。

監督自身まだ青年だった1982年に起こった「サブラ・シャティーラの虐殺」は対レバノン戦の時、その地に暮らすパレスチナ人をイスラエル兵が殺した忌まわしき想い出。

監督自身の記憶はその前後は鮮明に残っているのに、当日の記憶はない。それを思い出すべく、監督は当時、戦場で出逢った仲間を訪ねる旅を始める。

本人が写った本物の写真数枚の中に一枚、合成で作った架空の写真を混ぜると、10人中8人が架空の想い出を思い出し、残る二人も記憶があやふやだがとその架空の想い出を認めるという。

戦場での抜け落ちた記憶はPTSD(心的外傷後ストレス障害)である。繰り返し映し出されるのは、何とか生き延び、水辺から陸に上がる兵士たちの映像。

戦争とは人が人を殺される前に如何に殺すかということ。

殺された者たちは人の胸ほどの高さに積み上げられ、殺した者は精神バランスを維持するために記憶を失うか、狂気に走るかするだけ。

銃撃戦の最中、鳴り止まぬ敵の銃声に脅え、いらだち、隣の奴の機関銃を奪い取って、ワルツを踊るかのごとく機関銃を乱射する若者。

狂気の地獄に、正義は牙をむき、捕らえた敵の肉体を切り刻み、解体する事で正義を達成させる。

「時に武力は必要だ」その結果がここにある。

0 件のコメント: