2010-08-01

卒業 Graduation

重松清さんの著作を年代順に読んできて、この「卒業」が今の重松清さんの作法の始まりなんだろうなと思う。

泣けるとされる「流星ワゴン」などはそれ程感銘も受けはせず、幼き日の著者がベースになっているといわれる「きよしこ」の方が素直に泣けた僕としては、この「卒業」は重松節を心ゆく堪能出来た。

親の死をベースに展開される四つの物語は、親の死と向き合うことで、無理してきた自分を知る物語たちでもあった。

落ちこぼれの妹をけして叱らなかった母から落ちこぼれた息子にどう対処していいか判らない自分の了見の狭さを知る「まゆみのマ-チ」、末期がんの元教師の父の看病を「死」にこだわる教え子にやらせる「あおげば尊し」、廻りから「死ね」と云われ、簡単に死ねそうな気になってしまう女の子が自殺した父を知ろうとする「卒業」、幼い頃に亡くした実母の面影に固執し、義母と対立する「追伸」。

どれも泣ける話だけれども、最後の「追伸」は自分自身の実母と義母に対する想いと重なり、声をあげ泣きそうになるのをぐっとこらえた。

著者自身、許しの物語と語る通り、許された者たちの話はやはり泣けてくる。

「与えるよりも与えられよ」「愛するよりも愛されよ」

マザー・テレサの言葉がふと頭を過ぎったりもする。

2 件のコメント:

moto-okami さんのコメント...

「流星ワゴン」で泣けなかったので「卒業」図書館で予約しました。
「その日のまえに」は最後の最後でちょっとグッとなったけど(野菜が届くところです)。
体調よさそうで安心しました。夏バテ注意!お互いにですが。

cinema-novo さんのコメント...

重松で一番好きなのはやはり「青い鳥」かも。「きよしこ」が二番目かな。
「その日のまえに」はまだ未読。
この時期から書き出しているエッセイの方に今はシフトして読んでいますけど。

今年の夏は長丁場になりそうですから、moto-okami さんも無理なさらずに。
お盆から始まる札幌競馬でも楽しんで下さい。(^o-)/☆