イランの名匠アッバス・キアロスタミの最新作と聞き、観に行ってきた。
予備知識なしで観た作品はキアロスタミ監督らしいディスカッションが繰り広げられる不思議なラブ・ストーリー。
ロマンス・グレーの作家を演じるウィリアム・シメルはオペラ歌手のようだけどその包容力が素晴らしく、対する追っかけ母さん役のジュリエット・ビノシュは観ててイラッと来るのはやはりうまいという事だろう。
劇中、作家によって語られる「本物」「贋作」論議はなかなか鋭い。
「人間の歴史はDNAのコピーの繰り返し」
「「モナリザ」だって、レオナルド・ダ・ヴィンチによるジョコンド夫人の複製」
コピー文化華やかな時代、「本物」の特権を主張する著作権論者は怒り出しそうな事を次々と語る出だしに思わずニヤリしてしまう。
追っかけ母さんとのアバンチュールの中、二人の彩りに加わる人々の語りもキアロスタミぽくって、キアロスタミ健在と嬉しくなる。
その一人、二人が入った喫茶店の女将さんがジュリエット・ビノシュに語る人生訓。
「夫が仕事に夢中って事はいい事さ。仕事に夢中の間、妻は自由でいられる」
「夫がいるから女は妻になれる」
「夜にたどりつけない男と女」キャッチ・コピーに使われる通りの物語を通してキアロスタミ哲学を堪能出来た一品だった。
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