「軽蔑されるほど人を愛し抜いたことがありますか?」
だいぶ以前に読んだ中上健次の「軽蔑」が映画化されると聞いたのは、震災前だっただろうか?
今の若手俳優にどこまで中上健次の世界を表現出来るか、大した期待もせず観に行った映画「軽蔑」は高良健吾、鈴木杏の肉感を感じさせる中上ワールドになっていた。
「五分と五分じゃなきゃ嫌だからね」
チンピラに誘われ、田舎に行くダンサーが吐く言葉は、田舎のねたみに負けまいと五分と五分に生きようとする女のすさまじさになっていく。
一方、男は馴れ合いの世界で、利用され、食い潰されて、行き当たりばったりの鉄砲玉のようにはじけ飛ぶ。
生活の上に生きる女と虚栄の上に生きる男では、五分と五分なら、女の方が凄まじくならざるえないだろう。
女の凄まじさに五分と五分であろうした時、男は砕け散る。
男の粋がりのはかなさは生活に根付きもしない何と愚かなことだろう。
今の若者が演じる違和感もなく、「軽蔑されるほど人を愛し抜く」女と男は不滅なんだなぁと当たり前の事に気付かされた。
熊野新宮の路地を動き回るカメラはそんな女と男を捉えていた。
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