2013-11-04

襤褸の旗 The Tattered Banner

「亡国に至るを知らざれば即ら亡国の儀につき質問」

日本初の公害事件と言われる足尾銅山鉱毒事件を告発した政治家、田中正造の半生を描いた作品でDVD化もされていなかったのが、福島第一原発事故により、避難されている福島県人を応援されている団体が主催で、上映会が行われた。

上映会はかつて映画館であったホールを借り行われたのだけれど、二回上映のうち、昼の部は満員で当初予定されていた地下の小さなホールから急遽二階の大ホールに会場を変更されるほどの大盛況で、避難されている福島県人の方々が観に来られていたのかなと思った。

昨今騒がしている山本太郎議員の「天皇直訴」もこの映画に似たような場面があり、どうも山本太郎議員のパフォーマンスという気がする。

保守派の田中正造は議会で足尾銅山鉱毒事件の惨状を訴え、無視を決め込む政府に対し、議員を辞職し、社会主義を訴える幸徳秋水と密会して、天皇直訴に及ぶ。その腹には社会主義に煽られ、行った愚考とし、社会の目を足尾に向けさせようという企てがあった。

山本太郎議員の想いも似たようなものとは思うけど、田中正造の方が役者は上で、そこまで練った企ても国家権力にあえなく潰される。

直訴後の田中の活動は群馬、埼玉の鉱毒被害地の貯水池計画との闘いに明け暮れ、映画は土地を守る闘いを続けた男の半生が描かれ、制作当時の三里塚闘争との連携で作られたらしく、骨太な作品になっていた。

今の国会には田中正造はいないのか。上映会ではそう語られたのだけど、むしろ田中正造を悪者と評価する下村文科相なども出る始末で、原発避難民を救済しようとする動きは今の国会にはないみたいだ。

福島第一原発事故の問題を田中正造の取り組んだ問題と同列に語ることは無理だろう。あるいは田中正造のパフォーマンスは鉱毒被害を更に深刻な結果に持っていったのかも知れない。そのどちらもの過ちは国会で十二分に議論を尽くさない同じ過ちじゃないだろうか。

「亡国に至るを知らざれば即ら亡国の儀につき質問」

土との対話の大切さ、それが国益なんじゃないだろうか。

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