生きる上での暴力にこだわり続け、自作の喜劇を「怒劇」と言った森崎東爺の新作が公開された。
62歳で漫画家デビューを果たした岡野雄一の介護日誌コミック「ペコロスの母に会いに行く」「ペコロスの玉手箱」を原作にした映画は痴呆症が進んでいく母に振り回される家族の物語を笑わせつつも感じさせるドラマに仕上がっていた。
往年の名優たちが脇を固め、痴呆の母を演じる赤木春恵も見事な演技を見せてくれる。
母の若い頃、長崎の原爆を体験し、気の弱い夫の酒乱による暴力に堪え、友を原爆症で亡くすドラマが挟まれ、痴呆症の母の病状が進行していく。
母に息子である自分が誰なのか判らなくなる。そのショック、何となくそれが想像出来る。高齢の母を抱えた身にはこれから起きるかも知れない世界が見えてくる。
惚けることで人は現実と向き合わずに老いていく。それを受け入れられるかどうかは現実と向き合う痴呆症の家族を抱える家族。
生きるという哀しい暴力を映画は見せてくれる。
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