亡くなられた松田春翠さんを偲んで、淀川長治さんが監修された小津安二郎映画の活弁トーキー。
レンタルショップにそのテープが並んであったので、借りてきて観ました。
『大学は出たけれど』『生れてはみたけれど』のシニカルコメディは松田春翠さんの語り口もうまいけど、『浮草物語』のようなシビアな話になると語り口が重くなってしまってますね。
ざっと小津安二郎映画の内容を紹介すると
『大学は出たけれど』は金融恐慌で就職難のご時世、大学卒の主人公が面接で「受付」の仕事を命じられ、そんなの嫌だとニートになってしまうお話。最後の説教訓が小津さんらしい。
『生れてはみたけれど』は副題に『大人の観る絵本』という添え書きがあるコメディで、近所のガキ大将兄弟がある日、家来のお父さんに自分のお父さんがご機嫌取っている姿を見てしまい、ハンガーストライキを起こす。大人になると腕力だけではない上下関係があるという悲哀を描いたもの。
『浮草物語』は ドサ廻り芝居の座長が、昔、子供を産ませた女のいる町へ巡業に行き、その息子とのかかわりなどを描いた映画。重く湿った話を小津のアメリカナイズされた粋なセリフで話を進ませている。
昭和初期の人たちの生き様や考え方を観られる貴重なフィルムに当時音無しのサイレントにつけられたという活動弁士の再現に尽力尽くした松田春翠さんの在りし日の録音テープを被せたこの映像はめまぐるしく変わるメディア世界でDVD化もされずにいる。
お弟子さん達の活動は今も活発のようだけど、粋でイナセな、短気だけれどもせせこましくないそんな日本人気質を記録した文化資材がハイテク技術で気軽に観られ、後世まで語り継がれる事を願ってやまない。
ちなみに今年の猛暑のような状況が70十数年ぶりといわれるのだから、昭和初期にもあったはずで、人のしぐさからどのような暑さ対策がなされていたのかも興味深くもあるのですが。
- OhmyNews : 活弁映画に猛暑の70数年前を観る
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