2007-08-07

白い光/黒い雨 White Light/Black Rain

日本の若者たちに「1945年8月6日に何が起こったか?」と問いかけ、「わからない」「知らない」と答える場面から始まる映画『ヒロシマナガサキ』は、在米日系三世のドキュメント作家、スティーヴン・オカザキ監督が、25年の歳月のこだわりをまとめ上げた作品。

「戦争を早期に終わらせ、日米両国民の命を救った」と原爆投下を認識するアメリカ世論の中、被爆50年の1995年、米スミソニアン協会で開催される予定だった原爆展も米国内の猛反発で中止となり、展示予定だったオカザキ監督の映画も急遽中止になったという。

映画はナレーションを挟まずに歴史の出来事順に、当時のニュースフィルムや被爆者の調査記録として残されたフィルム、それに14人の被爆者と原爆投下に関与した4人のアメリカ人の証言で物語られる。

歴史的経緯の後、原爆投下の日、4人のアメリカ人はその爆弾の威力を聴かされることなく、「戦争を早期に終わらせる事が出来る」任務につき、爆弾投下の数十秒後、大きな火柱を目前に黙祷する。

投下された爆弾は白い光を放ち、5,000度とも云われる熱波が広島・長崎を襲い、熱風となり、家々を焼き尽くした。生き延びた者たちは水を求め、小さな防火水そうに群がり、あぶれた者は川へ飛びこんだ。油まじりの黒い雨がその上に降り注がれる。

被爆者たちの証言は敗戦後、GHQがモルモットのように被爆者たちを集め、治療もせずに調査した話、やがてその中から喀血する症状が出始め、被爆者は伝染するとデマが流れた話が続く。

「身体の傷と心の傷。両方の傷を背負いながら生きている苦しみは、私たちで十分です。」

戦争を始めた日本からも戦争を終わらせたアメリカからも人間扱いされなかった被爆者たち。

「原爆乙女」としてアメリカでの無償の治療に旅立った娘たちもワイドショーに引っ張り出され、悲劇のヒロインを演じさせられる。

それでも「原爆乙女」だった証言者の彼女は救ってくれた国アメリカに移り住む。

原爆投下を後悔しないと言い切る4人のアメリカ人たちはそれぞれこう語る。

「核戦争の危機をとても現実的なものと考えている」
「我々はパンドラの箱を開けたのさ」
「核兵器が欲しいと思う国が持つ事になるのは間違いない」
「イラクに原爆落としゃいいんだいうバカな奴が必ずいる。核兵器が何なのかまるで判っちゃいない。判っていたら言えない事だ」

この映画は今年8月6日に全米にむけてテレビ放映されたという。

広島市原爆死没者慰霊式・平和祈念式の安倍内閣総理大臣挨拶とともに、全米国民が核の恐怖に気がついてくれる事を願って止まない。

広島市原爆死没者慰霊式・平和祈念式の安倍内閣総理大臣挨拶より

私は、犠牲者の御霊と広島市民の皆様の前で、広島、長崎の悲劇を再び繰り返してはならないとの決意をより一層強固なものとしました。今後とも、憲法の規定を遵守し、国際平和を誠実に希求し、非核三原則を堅持していくことを改めてお誓い申し上げます。

また、国連総会への核軍縮決議案の提出などを通じて、国際社会の先頭に立ち、核兵器の廃絶と恒久平和の実現に向け、全力で取り組んでまいります。

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