2007-10-24

ぼくの村は美しい国 My village is a beautiful country.

殺伐とした事件を告げるニュースが続く昨今、今年になり、ライブやラジオ出演、過去のレコードの紙ジャケCDでの復刻など活発な活動を続けている"フォークの神様"岡林信康の近刊『ぼくの村は美しい国 竜太の日記』を読んだ。

いまに食うものがなくなる日がくる。
その時、泣きながら、この絵本を読もう。

背帯でビートたけしがこんな推薦文を書くこの本は「アーティストによる絵本シリーズ」の一巻としてランダムハウス講談社から発売された物で、ある程度の年代以上なら子供の頃に大人からよく聴かされた「お百姓さんの暮らし」を子供の視点から書かれた物。

岡林さん自身、今で云う格差のシンボルである大阪の山谷とも呼ばれるあいりん地区に転がり込み、そこで見聞きした"地獄極楽"の世界を歌った「山谷ブルース」でフォーク歌手として注目をあび、売れっ子歌手として、忙殺される日々を過ごすうち、自分のメッセージがいつの間にか全然違うメッセージとして世の中に受け入れられてしまっている現実が嫌で失踪し、北陸の山村に引きこもった経験がある方。

そこでの子育て経験をおそらくは絵本にした『ぼくの村は美しい国 竜太の日記』はツバメとともに春が来て、夏、秋、冬を過ごし、またツバメの来る春で終わる”人間の幸福(ひとよのさいわい)”

いわれのない"差別"と対峙する人たちに向け、語りかけるよう歌った「友よ」はいつの間にか労働組合の団結歌として歌われるようになり、それが嫌でたまらなかった岡林さんはその後、試行錯誤を続け、イギリスでキング・クリムゾンのロバート・フィリップに「いいかげんに俺達の真似はやめたらどうだ。日本のロックを聞かせてみろよ」と侮蔑的に浴びせられた一言から日本各地のリズムを駆使したエンヤトットミュージックに辿り着き、今日に至っている。

殺伐とした事件が続く今日、食糧自給率が低下し続けもしている日本社会、”人間の幸福(ひとよのさいわい)”を思い返すこの絵本、”ひとよのさいわい”とは、幸田露伴が明治31年に20世紀の子供たちのために書いた「文明の庫」から引用したとも書かれており、21世紀の子供たちのために残せる社会を岡林さんは模索されているのだろう。

数年前のライブでは「日本各地には独自のリズムが伝わっています」と和楽器と弾き語りギターをジョイントさせ、韓国のサムルノリ、ブラジルのバトゥカーダと交わる事で、更に土着性が色濃くなると、実演の”人間の幸福(ひとよのさいわい)”を聴かせてくれた岡林さんのライブも来月、売却決まり、存続運動がなされている札幌の厚生年金会館でまた逢える。

いまに食うものがなくなる日がくる。
その時、泣きながら、この絵本を読もう。

ビートたけしの推薦文の通りになる前に。

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