先週観た映画の忘備録。
親類縁者と国境で裂かれた家族、「叫びの丘」と呼ばれる国境地帯で拡声器を使わなければ会話出来ないその家族に娘の縁談がまとまる。国境を越えた者は二度とこの地に戻れない。
イスラエルとシリア、レバノン、ヨルダンにまたがるゴラン高原の政治的に複雑な状況の中、娘の幸福を願い、シリアの縁者に嫁がせようとする家族は、少数民族であるが故に、孤立したこの土地では「無国籍者」として監視されもする。
生きるために長男は反対を押し切り、ロシア人の妻の元へ旅立ち、次男はイタリアへ出稼ぎに行っているけれども、妹の婚礼の日、みんなは懐かしい故郷に集まり集う。
何度も投獄される父に寄り添う母を見守る姉はいつしかこの家族を支える女性となり、不安がる妹を励まし続ける。
そんな入り組んだ環境の中、花婿のいない婚礼は進められ、いよいよ嫁ぐ「国境越え」の儀へと向かうのだけど、そこには「国境越え」のプライドを争う国の役人のメンツ争いがあった。
何の遮りもないところに鉄条網を作る人の愚かさは敵対視する者たちへの柵であるとともに、鉄条網の中に住む者たちをも縛り付ける柵でもある。
イスラエル制作という事で、イスラエル側に手落ちはないという風に作られつつも、「国境紛争」の馬鹿馬鹿しさを映画は描きつつ、役人のメンツ争いなどは縦割り行政を思い起こさせる。
人の幸福よりも自分のメンツ。心の国境を越えるのは難しい。
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