木下恵介の映画に『陸軍』というのがあります。
戦時中に作られた映画で、今はDVD全集の中に収められています。
その『陸軍』は富国強兵政策の時代、忠君愛国に身をていした一家族の西南戦争から日清、日露、大東亜戦争の大河ドラマで、原作は火野葦平です。
国のために死んでいくわが子たちを誇りにする家族の話が戦意高揚にもなった見本のような映画ですが、ラスト、田中絹代演じる母が、出征する我が子の姿を追い、何度も転び、追いつけなくなるまで、追いかける場面が軍当局から「女々しい」といわれ、上映禁止になった映画でもあります。
今の世相から当時を顧みると理解出来ないと思いますが、わが子たちを誇りにする事が、出征兵士にする事であり、隣近所もまた、出征兵士を出す事が誇りの時代。
親のエゴを巧みに利用した社会システムであり、それが素直に「追いかける」という誇りにする行為を映した木下恵介は「女々しい」と叱られたのです。
黒澤明などにも『一番美しく』という戦意高揚映画がありますし、当時、どう描けば、戦意高揚になるのか、判ると思いますよ。
「桃太郎」などの昔話も戦意高揚に使われましたし、今、日本映画チャンネルで観られる市川崑の『新説カチカチ山』というアニメも巧みに作られた戦意高揚映画です。
そして、そういう風潮を作り上げたのも庶民たちで、お互いを監視する役割として、町内会が「隣組」にもなったそうです。
そんな洗脳を受けて育ったのが、戦中派世代です。
機会あれば、戦時中の映画をご覧になって下さい。
違和感なく観られると思いますよ。
(そこが怖いのだけど)
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