映画『子供の情景』は原題訳「ブッタは恥辱のあまり崩れ落ちた」の方がふさわしい。
演じるのはアフガンの破壊された世界遺産「バーミアン遺跡」の傍に暮らす子供たちだけど、別に子供じゃなくてもかまわないし、「バーミアン遺跡」の傍である必要もない。
今世紀の始まり、アフガン紛争の時、タリバン政権が偶像崇拝禁止を理由に、古来シルクロードの交易の地として栄え、今なお昔の栄華を伝えていた高さ55メートルの西大仏、同じく38メートルの東大仏が破壊された場所であるから、子供らはタリバンごっこに興じ、逆らえない女の子たちを捕まえ、拉致する。
さながら日本だと、リストラ盛んな会社で、なんとかリストラを逃れ、勤める親の子供たちが、ゲームさながらに、逆らえそうにない弱い奴をいじめるようなもので、アフガンだからという風に見ると、どこ吹く風の「あーら、大変ねぇ」になってしまう。
貧困にあえぐアフガンではまともに勉学を受けられない子供たちがいて、大人の影響でタリバンごっこの殺し合いの遊びに興じるけれども、裕福極める日本では、マルチメディアで暴力が教えられる。
文字を読めない女の子は本に描かれたイラストを声にし、隣の男の子に本に書かれている事を教えられ、本を読めるようになりたいと願うけれども、今の日本ではネットのページも文章よりもイラスト重視の作りが好まれ、ゲームなどでも書かれている文字がろくに読めなくてもゲームが楽しめるよう配慮されているから、この映画の女の子のような向学心に目覚める話はあまり聴かない。
マルチメディアという空爆を浴び続ける日本の若者と、本物の空爆を浴び続け、人を憎む事しか教えられないアフガンの子供たち。
「ブッタは恥辱のあまり崩れ落ちた」とはもしかすると現代社会をシンボリックに描いた寓話なのかも知れない。ラスト、逃げまどう女の子にどうする事も出来ない男の子が叫ぶひと言は辛く重い。
子供は大人の鏡なのだから。
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