2009-06-01

深くこの世を旅したかいな Did you travel deeply around this world?

娘の旅立ちを歌った歌を歌う時、この娘が今は孫を産み、その孫を抱いていると語る岡林信康は、今回のコンサートでは弾き語りで、自分が昔に作った歌をいっぱい歌ってくれた。

無数の出逢いと無数の別れと無数の忘却。忘れ去れるものを歌い続けた人なんだなぁとその歌の数々を聴き、そう思う。

忘れ去られるものたちだから、見事華麗に咲き誇る。そんな感じが第二部に用意された和楽器演奏によるコラボレーション。

笛、太鼓、津軽三味線に、韓国、アフリカの打楽器が奏でられる中、岡林の歌は続く。

「俺たちがなくしたもの、草原に生きずいて」北海道の空に似ているというので歌われた「モンゴル草原」を聞く時、いつも郷愁が思い起こされるのは、そんな忘れ去れたものだからだろうか。

夫を亡くした高齢の女性が励まされたという「風詩」を聴いた時、そこに歌われる「深くこの世を旅したかいな」という歌詞が耳に残る。

「深くこの世を旅したかいな」どれだけ自分は自分の身の回りの「この世」を旅しているのだろうか。隣に座り、一緒に聴きに行った友達の顔をそれとなくのぞき込み、そんな事を思ったりする。

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