2007-11-18

笠智衆 Chishu Ryu

来春、没後15年を迎える笠智衆の晩年のドラマ、倉本聰の『波の盆』と山田太一の『冬構え』を見直したけど、ライターの腕を競い合った倉本聰、山田太一では山田太一の方がやはりうまいなぁ。

在米日本人の太平洋戦争を描いた『波の盆』、死出の旅をする『冬構え』、晩年の笠智衆はこの国の老いの寂しさを演じ続けた人だけど、『冬構え』の老人の寂しさはつらくなるほど切ない。

田中絹代と戦時中に暮らした樺太・真岡へ帰ろうと今はなき、樺太行きの船が出ていた小樽の街をさまよう『幻の町』もビデオ復刻を是非望みたい。

最晩年、黒澤明監督の『夢』の一話「水車のある村」で自然を尊び、生きながらえた事に感謝し、生きる老人の姿は他の挿話で繰り返される争いの末路が如何に愚かなのかを演じ尽くしていた。

この好々爺も太平洋戦争時には「お国のため」の正しさを演じ、説き続けた事を思うと、あの飄々とした演技の底には懺悔があり、老いの天罰をひたすらまじめに受け止めたのではないかとも思われる。

「今の若い人には戦争の話なんか興味ないでしょう」

そう語りつつも、語りたがった老人であり、持ち金をばらまき、死のうとして、死にきれず、若き日の友達たちを訪ね歩く老人でもあった笠智衆演じる老人の寂しさを今一度噛みしめてみたいとも思ったりする。

「生きるのも、死ぬのも辛いものです」

あなたの歩んだ道をこれから歩む身として。

  • OhmyNews : 生きる辛さを演じた笠智衆を思う

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