2007-11-07

さよならだけが人生だ Only the goodbye is a life.

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ

井伏鱒二の訳詩で有名な唐(618-907)の于武陵[うぶりょう](810-?) が作った「勧酒」と題する五言絶句。原文を記すとこうなる。

勧君金屈卮
満酌不須辞
花発多風雨
人生足別離

昨日、昔からの友達と昼をご一緒し、この夏に亡くなった友人の話となり、この漢詩を思い出した。

亡くなった友達は自営で請負の仕事を行っていたけれど、成人となった息子に技術を教えつつ、仕事をこなしていたという。

奥さんは仕事の経理をしていたけれど、受注、見積もりなどは友達が全部仕切っていたという。

その友達が急死し、一手に仕事の内実を仕切っていた人がいなくなり、奥さんと息子さんは初めて、仕事の内実を知り、息子さんが後を継ごうとした決意も無理と判断されたらしい。

人の良い友達は長い付き合いの企業から安く仕事を請け負い、数をこなさなければ会社経営が成り立たない状況を自ら作ってしまったため、過労が溜まり、くも膜下出血で倒れられた。

葬儀を終え、引き継ぐ事を表明していた息子さんの携帯には仕事の依頼の電話が殺到し、ちゃんと引き継ぎもしていない息子さんも何から手をつけていいか判らない状態。

このまま、仕事を続けると友人の二の舞にもなりかねない状況で、店をたたむ事にしたらしい。

奥さんは息子さんを出産の時に骨盤を痛め、歩くのもままならないけれど、障害年金の対象外の障害4級でしかなく、50代半ばで亡くなった友人の遺族年金も減額対象でもあるという。

幸い、自営ながら従業員数の条件緩和で国民保険から社会保険に切り替えてあったのが救いといえば救いだけれど。

まだまだ元気で働けると誰もが思いたいのが人情だけど、元気なうちに元気な自分を愛おしみ、自分がいなくなっても家族が困らない「ゆとり」を持つ大切さを感じてしまう。

この杯を受けてくれ
どうぞなみなみ注がしておくれ
花に嵐のたとえもあるぞ
さよならだけが人生だ

友との語らいはそれゆえ、大切なのだろう。

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