2008-03-05

あるビデオ屋 video shop

春の日差しが感じられるほどに穏やかになったこの頃、ビデオ鑑賞の趣味が高じ、見たいビデオを捜すため、ネットの電話帳を頼りに札幌のレンタルビデオ巡りをしてみた。

昔歩き回ったそれぞれの街並みはかつてのような活気はなく、それぞれ個性があった街の風景もどこもスーパーや大型チェーン店が並ぶ同じような風景になってしまっているのが、今さらながら寂しかった。

お目当てのレンタルビデオ屋のほとんどがもここ最近進出した大型チェーンの影響か、もしくは帰宅後のお客目当てに夜間営業に切り替えた為か、みなシャッターを下ろしており、無駄足になってしまった。

そんな状況下、一件のセル専門のビデオショップが開いていたので、のぞいてみた。

何度か店の前を通った事はあるけれども、いつも閉まっている店なのだが、中にはいると店長とおぼしき人が改装作業をしており、こちらを振り返り、「明日からオープンするんで」とやんわり、断られた。

翌日は仕事だったので、日を改めて、出直すと「開店10周年セール」と張り出された店の入り口の前、店長さんが誰かを待っているようで、外に出ていた。

僕が行くと店長は店に戻り、迎え入れてくれ、僕はさっそく、「セールに付き、100円から大放出」と書かれた在庫ビデオの品定めをし始めた。

そこへ人待ちしていた店長のお目当てである人が入ってきて、店長といろいろ世間話をし始めた。

狭い店内、二人の会話はこちらに筒抜けで、否が応でも聞こえてくる。

本棚で仕切られ、奥がアダルトビデオのコーナーになっている店内を物色しながらも、何げに二人の会話を耳にした。

「この店、10年も続けているんだ」と聞く来客に店長は、ビデオショップの苦労話を軽く流しながら、語りはじめる。

レンタルビデオが出来たのは1980年代のビデオ再生機の普及からで、当時高値だったビデオ・ソフトはレンタルが主流だったけれども、再生機の普及とバブルの時期が重なり、ビデオ・ソフトの価格も低価格化し、セル専門のビデオショップが生まれ、安定収入を確保できるいわゆる「エロ、グロ、ナンセンス」の娯楽ビデオを中心にしたショップが増えてきて、特にアダルトビデオは専門店が出来るほどに広がっていった。

ここの店は表通りに面したショップウィンドウには、一般の映画ソフトを並べ、奥にはアダルトがコーナーとしてある作りだけれど、表通りからショップ内を一切見せない作りのアダルト専門やショップ内にビデオ鑑賞できる個室を用意した店など、ビデオ業界はより気兼ねなくアダルトビデオを楽しめる環境作りに工夫を凝らしていった流れがある。

店長と来客の会話で、「公判もあるしさ」という会話が聞こえ、この店もモザイク消しや「裏」と呼ばれる違法なビデオにまで手を出さざるおえなかったのだろうと感じた。

「セール期間だけ昼から開けて、また夕方から営業に戻すさ」入りが悪いのを承知で開いた店長のぼやきが聞こえてくる。

店に並んだ一般の映画ビデオの品揃えは映画好きなのだろうと思わせるもので、ここの店長の夢と挫折を顧みるような想いをした。

プレミア物のDVDが値札価格でも1,500円と格安だったので、それを買うため、面隠しのレジに行くと、少し間があり、「100円です。」と店長の声。

個人経営のショップの悪戦苦闘はやがてはシャッター通りの一風景になってしまうのだろうか?

かつて日本で最も流行に敏感という定評からタワーレコード日本進出第一号店を開かせた札幌の街の寂しい現状を見る思いもした。

  • OhmyNews : アダルトビデオで生き残りはしたものの……

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