好きな監督であるテオ・アンゲロプロスの未公開作品で、公開がなかなか決まらず残念に思っていた作品がご本人の不慮の事故死により、皮肉にも公開される運びとなった。
テオ・アンゲロプロスが思い描く20世紀として、黒海の街オデッセイに始まるロシア革命から9.11のニューヨークまでを描く三部作の第二作が本作。
前作「エレニの旅」がギリシャ国内の難民の話なら、本作「エレニの帰郷」は故郷を奪われたさまよえるギリシャ人。
冷戦時代の波に翻弄されたエレニは20世紀の最後の日、心の居場所を失った孫娘を東西に分断されていた街ベルリンで抱きしめる。
時代の並べ方が記号化された気もするけど、奪われた者の旅という20世紀トロジーは心に残る。
テオ・アンゲロプロスとしてはおそらく始めての全編海外ロケ作品。ギリシャで見せた霧は更に深まり、「そこか、死か」の国境は単なる一本の道。
第三の翼を夢見る時の埃たちのドラマは願いのドラマ。
未完である遺作「もうひとつの海」はギリシャの債務危機を取り上げているそうで、その急死は重ね重ね残念で仕方がない。
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