もう一週間にもなるだろうか。
養母の右目のまぶたにできものがあるのに気がついた。
養母は義理であるためか、いつまでもこちらの様子を見る癖があり、右目のまぶたのできものの事も自分から話はしない。こちらも気にはなるけど、ものもらいだろうと思い、別段聴きもしなかった。
昨日、養母を見ると右目のまぶたのできものは更に大きくなっているので、週末、介護に来てくれている従妹に病院に連れていって貰えというと、週末は病院は休みだと、こちらの無関心ぶりをなじる。
もの20年にもなろうか、病院のまかない婦の仕事をしていた養母は職場内の人間関係やちょうどその頃、糖尿が悪化した養父の食事療法などが重なり、精神的にまいり、自律神経失調症になった。
病院への出勤途中、急に具合が悪くなり、途中駅で下車し、見知らぬ女の子に介抱して貰いはしたけど、それが条件反射となり、外に出ると具合が悪くなると思いこみ、一歩も外に出られなくなった。
病状は悪化し、心臓が締め付けられるような苦しみを訴えたり、台所で包丁をさわるのが怖くなったりもした事がある。
年末、歯の痛みを訴え、救急病院に同伴した時も、診察台に座ると潜在的な恐怖心から全身が震えを起こし、歯医者も全身麻酔をしなければ、治療は出来ない、けれども、全身麻酔をする事でショック状態におちいる可能性もあるといわれた。
養父が急死し、母はそのショックから一時、病状は悪化したけれど、糖尿の看病から解放されたせいか、安定した気持ちになりはしたけれど、僕への依存を強める結果にもなり、それに付き合うと何も出来なくなるので、突き放し、こちらも自分の時間を確保するのに必死だった。
「母さん、死んでもいいのか」
ある日、仕事に出かける際、不安からこちらに投げかけられた言葉はその日一日、憂鬱にさせた。
そんな母であるから、自分で病院に行こうとしない限り、手もつけられない。
本人は「痛くもかゆくもない」とそのできものの事を話すけれど、やはりこちらは不安になる。
実母が乳のしこりから乳癌の手術をし、亡くなっているだけに、なおのことである。
「癌かも知れない」
養母は脅し文句をはき、こちらの様子をうかがうけれど、こちらもますます厳しくなる仕事状況、それどころではない。
幸い、養母の友人たちが頻繁に出入りしてくれているので助かりもするけれど、自律神経を患い、年老いていく養母を背負い込み、遣り繰りしなければならないきつさは僕しか判らない。
大事にならず、単なるはれ物として、できものが治る事を今は望むだけ。
老いと向き合う生活は続いている。
- OhmyNews : 「母さんが死んでもいいのか」
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