2008-01-08

カタリーナ・ブルームの失われた名誉 Die verlorene ehre der katharina blum

『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』ビデオジャケット

映画のビデオレンタル捜しも終盤。かなりのビデオを見つけ、見る事が叶ったけれど、どうしても見つけられない映画が数本ある。

余程入手したい作品はヤフオクをチェックもするけれど、それでも出てこないものもあり、ネットの中古ビデオ屋を調べてみると、なかなか巡り会えなかった一本で『ブリキの太鼓』(1979年作品)で知られたドイツの映画作家フォルカー・シュレンドルフの『情事の報酬 カタリーナの失われた名誉』(1975年作品)を見つけ、手頃な値段でもあったので、購入する。

一夜を共にした男が過激派だったというだけで、過酷な取り調べを受け、マスコミに追いかけ回され、プライベートすら記者に踏みにじられた女性、カタリーナ・ブルームがその記者を打ち殺すと、世論はその記者を殉教者と祭り上げる。

日本では自主上映として上映されたこの映画は『ブリキの太鼓』から始まるニュー・ジャーマン・シネマの日本でのブームで上映されたのか、その前に上映されたのかは忘れてしまったけれど、その衝撃は強烈だった。

フォルカー・シュレンドルフの他に今もなおカルト人気があるヴィム・ヴェンダースの『都会のアリス』やゲイ作家でもあったライナー・ヴェルナー・ファスビンダーの『自由の代償』などは今日の人々の孤独をいち早く捉えた物であり、当時の西ドイツの作家達に夢中になったものである。

あれから30年を経て、他の作家達の作品や『ブリキの太鼓』などはDVD化されているけれど、『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』はあまりに過激な政治メッセージであるためか、DVD化されない。ビデオ化の時も売り文句として、ポルノチックを全面に出した『情事の報酬』のタイトルがメインとなり、主題をぼかしての発売に良識のなさが取りざたされたという話も聴きもする。

ポルノが一番商売となるこの国ではやはり致し方ないのだろうけど、ベットひとつと男と女だけの低予算で撮られた当時のピンク映画の政治的パッションと『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』のパッションはやはり似て非なる物。

イデオロギーが違えば、行き倒れでも殴り殺す現代社会の恐怖を描いた『カタリーナ・ブルームの失われた名誉』は最も今日的なテーマを扱っていると思うのだけど、日本ではやはりDVD化されないのだろうなと思う。

カタリーナ・ブルームの美しい裸体に汚らしいモザイクがかかったビデオでも我慢して、見られる幸せに、30年前の強烈な体験を思い返せたら、それでいいのだから。

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