2012-10-26

希望の国 The Land of Hope

再度の震災で原発事故がまた起こり、住民達は住んでいる家からの強制退去を命じられる。

放射能との見えない戦争で人々は右往左往する。

過激な描写で知られる園子温監督の新作は放射能戦争の物語。

描写は思ったほど過激ではなく、淡々とヒバクシャたちの実情を映し出す。

描かれる放射能汚染のエピソードもネットニュースで見聞きしたものばかりで目新しいことは描こうとはせず、現実に起こったことから組み立てられた物語が語られる。

若年性痴呆になった妻と自分の家に残ると決めた老年の男の物語が軸となり、大谷直子演じる若年性痴呆の妻の話が惹かれる。

いつも「家に帰ろう」という妻に「家にいるじゃないか」となだめすかしつつも、ある時、妻は幻聴に惹かれて誰もいない原発の街をひとりさまよい歩く。

その幸福感が現実の残酷さを感じさせる。

フクイチ原発の悲劇はまだ始まっていないと思う。

この映画は時期尚早すぎる映画であるだろうけど、観ていて、映画「チェルノブイリ・ハートの併映作品「ホワイト・ホース」を思い出した。チェルノブイリ事故で強制退去させられた青年が許可を得て帰宅した故郷の自分の部屋に永遠の別れを告げるドキュメンタリー。

帰る家に帰れない覚悟を決めた青年の孤独にヒバクが押し寄せてきて、数年後、青年は病死で土に帰る。

そんな厳しい現実を見据えなければ、僕たちの「希望の国」は生まれないと思う。

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