2007-12-14

出逢いは別れ Meeting is a start of the separation.

目が覚めれば、そこは雪国だった。(笑)

記録的な少雪といわれるこの冬は家を取り囲む雪がない分、寒さが身に染みたけれど、積もった雪を掻いて、歩く道をつける作業をしていると、春先に降るような湿った重い雪に温暖化を感じてしまう。

やがて10年になる父の死も年末押し詰まった12月だった。

兵隊に志願し、敗戦を迎え、炭鉱暮らしの若い頃は胸を患い、長く生きられないといわれた人だが、札幌に出て来て、生活を変えたのが幸いしたのか、ガリガリにやせた身体が太り始め、逆に糖尿を患う事となり、急に降った雪を掻きに外へ出ての心臓発作による急死だった。

亡くなった命日に、近くの郊外型銭湯に行くと、露天風呂で、父が亡くなった歳くらいだろうか、年配の方に昔話を熱心に聴く若者の姿があり、どんな経緯でそんな話をするようになったのか気にもなり、聞き耳を立ててみた。

年配の方は若い頃の仕事の待遇の話をされており、十数年しか経っていない、バブル時期でも社会保険なんて当てにしなく、老後の事など考えない言われるままに仕事をこなし、出来高を貰う生活だったと語り、「景気がよかったからなんとかなったんだろう」と振り返る。

「『出逢いは別れ』という言葉を知ってるかい?出逢えば別れが必ず来る。多くを望まないでその時を楽しむって事さ。」

年寄り好きな若者はその年配者の話に「そうなんだ」と相槌うち、話の終わりに「ありがとうございます。」と礼を言い、露天風呂から上がっていった。

僕も年配の方から昔話をよく聴かされる方だから、話の内容はよく理解できた。

結婚で退職の時に一時払いで全部貰ったという年金の積立金のお陰で、今、70歳を過ぎて、無年金で暮らす叔母は年金なんか信用しない人だった。

社会保障がどんなものなのか理解しなていない多くの年配者たちと今の格差社会でワーキング・プアを強いられる若者たち。

その狭間の社会制度が安定した時代に生まれた特定の世代もまた、多くのボーナスを貰うだけで、老後、無年金になるのだろうか?

ガルシア=マルケスの「大佐に手紙は来ない」のように功労報われないまま、恩給の知らせを待つ日々を。

湿った雪がその重みで家を押し潰さないように近所の年配者は雪を掻く。

  • OhmyNews : 無年金の不安を抱えて

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