サッカーのアジア・カップで日本代表の勝利に酔いしれている昨今、ケン・ローチ監督が、マンチェスター・ユナイテッドでは、FAカップとの2度のダブル(2冠)を含め、4度のリーグ優勝を経験したエリック・カントナを迎えて作られたロマンティック・コメディ「エリックを探して」を観てきた。
「人生なんて 意外に小さな勇気でかわるもの」
風采上がらず、息子達にもかまって貰えない初老に差し掛かったおじさんが、あこがれのエリック・カントナに励まされながら、ちょっとした勇気とちょっとした知恵で、変わっていく。
応援するだけ応援して、ブームが過ぎれば忘れるような国とは違い、海外のサッカー熱はその人の人生も左右する。
サッカー選手に励まされるって、誰に励まされるよりも励みになるのだろう。おじさん、エリックは叶えられなかった夢をまた追い掛け、ドン・キホーテのように果敢に人生にチャレンジする。
今読んでいる重松清の「海の見えるホテル(なぎさの媚薬 1)」にも、何もかも中途半端なおじさんを娼婦なぎさが、若い頃にタイムワープさせ、「あの頃は『命』と向き合っていたから」と『命』と向き合わなくなったと中年世代に気付かせる物語と同じように、おじさん、エリックは別れた妻に、ちょっとした勇気とちょっとした知恵で、若い時の情熱を思い返させる。
アシストするエリック・カントナが、おじさん、エリックのエスコートを勤めるのもむさい親父二人が少年になったようで、小気味よい。
「人生なんて 意外に小さな勇気でかわるもの」
社会は変えられなくても、自分を変えられるのは自分だよ。社会派監督ケン・ローチ初のハッピーエンドはそんな風に観る者たちに囁きかける。
サッカーのアジア・カップで日本代表は勝利した。次は僕らの番だよとね。